お客様相談室からのワンポイントアドバイス

東海光学お客様相談室です。

今回、お手入れ不要の防曇コーティング「メンテナンスフリーノンフォグコート(MFC)」を2014年1月に発売することになりました。そこで色々な切り口にて従来型のフォギーガードコート(FGC)と比較しながらメンテナンスフリーノンフォグコート(MFC)の実力を検証していきます。どのような結果になるかわかりませんが、ご購入を検討されている方の参考にしていただけるようなレポートに心がけます。

それではまずFGCとMFCの構造や特徴について整理・比較してみます。

1.フォギーガードコート(FGC)

この「フォギーガードコート(FGC)」は誠に勝手ながら2018年9月末を持って販売を終了させていただくことになりました。
今までご愛顧いただきましてありがとうございました。

メガネレンズの曇りは温度差によりレンズ表面が結露してできる非常に細かい水滴(水玉)に光が乱反射することで起こります。そこでFGCはレンズ表面に施した超薄膜の特殊コーティングが優れた親水性を発揮し、レンズ表面に発生する細かい水滴を膜状化(濡れたように見える場合もあります)することで結露や曇りを防ぎます。

このFGCはレンズの表面にFGC塗布剤(専用クリーナー:ご購入時に1本添付)を留まりやすくするための下地層があり、塗布後曇り止め効果を持続させます。しかしレンズ表面に雨水など水分が付着しますと塗布剤も取れてしまいますし、何度もレンズを拭かれますと曇り止めの効果はなくなってきますので、効果が薄れてきましたら塗布剤を補充していただきます。少し手間かもしれませんが、その行為は定期的な汚れの拭き取りと同じようなメンテナンス作業と思っていただければと思います。尚、このような仕様であっても補充以外の使い勝手は普通のレンズと変わりませんし、長くお使いいただけます。

このFGCは現在全てのレンズ対応ではなく屈折率1.6と1.7のレンズのオプションになります(一部商品を除く)。また撥水コートとは真逆の機能コートになりますので2つ同時につけることはできません。

2.メンテナンスフリーノンフォグコート(MFC)

FGCと大きく違う点は、レンズ表面に結露した水滴をはじく撥水コートを施している点です。白く反射する大きい水滴を付着しにくくし、細かい水蒸気のみを通すことで、表面には目に見える光の反射までにはならない細かい水滴だけを残す新撥水コートになります。よってFGCのように塗布剤を補充するようなメンテナンスは不要になります。

その他の違いですが、レンズを保護するハードコート層や反射防止コートが施されていない分、FGCや通常のレンズに比べキズが入りやすかったり、ぎらつきを感じる可能性がございます。また防曇効果はFGCは塗布剤を補充すれば効果は持続しますが、MFCの防曇効果は1~2年程度ということです。

対応できるレンズの種類ですが、プラスチックレンズの屈折率1.60のみ、ルティーナレンズは屈折率1.60と1.67のみの対応になっています(調光・偏光・2重焦点レンズを除く)。

それでは早速、いろいろな場面にてその効果を比較していきます。

まずMFCの最初のかけ心地ですが、やはり反射防止コートがない分、裏面の周辺部の反射(映り込み)がやはり気になりました。明るいところほど反射が強く見えます。以前無色レンズにライトミラーコートを施したメガネの体験レポートもしましたが、その時のことを思い出しました。

ミラーコートの裏面反射ほどはありませんが、初めての方は少し戸惑われるかもしれません。

[実験1] マスク装着時

より曇りやすさをだすために寒い屋外でメガネを冷やした後、室内で試しました。
普通のレンズ、FGC付きのレンズ、MFC付きのレンズ3本のテストになります。
FGCにつきましては直前に専用クリーナーをスプレーしました。

① 普通のレンズの場合、予想通りすぐに全体的に曇りました

② しばらく室内でかけ続けましたが、FGCは曇りませんでした。

③ 同じくMFCも曇りませんでした。

さらに曇ってしまう条件を探るために寒い屋外にマスクをしたまま出てみました。MFCの場合、最初は曇りませんでしたが、しばらくすると鼻側が曇りはじめました。気温が低く、息の温度との差が大きくなる場所ほど結露が大きくなり、MFCでも曇ってしまうことがわかりました。FGCの場合は同じく息が直接当たる鼻側の部分が濡れたようになりましたのでこのまま使い続けると塗布剤が流れてしまう可能性を感じました。それらに比べ普通のメガネは外に出た瞬間に室内以上にひどく曇ってしまいました。

MFCはFGCのように濡れたようになることはありませんが鼻側の一部分が徐々に曇ってきたのは、水蒸気を吸収する部分が飽和状態になると曇り始めてしまうからです。レンズに立て続けに何度も息を吹きかけると徐々に曇ることからもその状況が裏付けます。ただFGCのように塗布剤が取れてしまったら塗布剤を補充するまで曇り続けてしまいますが、MFCは少し曇っても、しばらくしたら自然にまた曇らなくなってくるなど、飽和と乾燥を繰り返しながら持続していきます。

その後、しばらく朝晩の出退社時にマスクをした状態で上記のような傾向にあるか試しましたが、やはりMFCは気温の低さの程度に合わせ鼻側を中心に曇る程度も増える傾向にあり、FGCは同じく気温が低いほど息がかかるところを中心に塗布剤が液状化してしまう傾向にあることがわかりました。白くならない分FGCのほうが視界は保たれるといった感じですが、もう少し外に出ている時間が長くなればFGCも塗布剤が取れてしまって曇り始めると思われます。よって手間がかからないという意味ではMFCのほうが使い勝手はいいということでしょうか。

[実験2] 浴室

次に曇りやすいと思われる自宅の浴室で試してみました。

お湯だけではなく石鹸やシャンプーなどがメガネに与えるダメージを考慮し、普段私はメガネをかけたままお風呂には入りませんが、今回は使命感を感じながらかけたまま入ってみました。しかし、カメラのレンズ自体が曇ってしまってうまく撮れなかったので結果だけを報告させていただきます。


普通のレンズのメガネで当初撮影。カメラのレンズも曇ってしまいました。

今回の設定ですが、浴室にメガネを2本持ち込んで15分間での経過観察になります。

MFCもFGCもしばらくは同じようにわずかに白くなった程度でしたが、5分過ぎたあたりからMFCのほうはレンズの周辺部のみ若干曇りが強くなり、その後はその周辺部の曇りもなくなり全体的に薄曇りになった程度で変化しませんでした。それに比べFGCは若干曇った程度で均一な濡れ具合になり、その濡れ具合が徐々に増し、その水分が下に流れていくような跡が確認できるようになりましたが特にそれ以上曇ることもありませんでした。浴室内の温度がそれほど低くないことが曇りにくくしているのかもしれません。結果どちらも浴室内では十分かけられることがわかりました。ただFGCについては表面の塗布剤が流れてしまったのでその後の補充が必要になりました。

[まとめ]

最近はほぼ毎日マスクをしたままMFCのメガネをかけていますが、気温がかなり低い時の少し離れた会社の駐車場までの行き来以外は特に曇って困ることはありません。食事の時もメガネをはずしわざと蒸気にさらし続けることをしなければ曇ることもありません。

よって寒冷地でマスクをされる状況では曇ってしまうと思いますが、それでも普通のメガネの尋常ではない曇り方ほどではないこと、室内でマスクをされる場合はほとんど曇りにくいことまたメンテナンスが特に必要ないことなどを考えると気軽に普段使いできるレンズということでしょうか。

デメリットとしては曇りにくい効果も1~2年ということ、反射防止コートが施されていないので少しぎらつくこと、キズ防止コートもないので扱いに注意が必要であることでしょうか。これらのデメリットはFGCであれば解決されますが、FGCの場合は効果が薄れてきたら塗布剤をスプレーしていただくという手間はございます。

■MFCのお手入れとご注意点

以下の文章はご購入時にメガネと一緒に渡される専用の取扱説明書の内容になります。

  • 通常マルチコートと比べるとすぐれた防曇効果を発揮しますが、使用環境によってはくもりが発生することがあります。レンズがくもった状態でのご使用は危険ですのでご注意ください。
  • 防曇効果は1~2年ですのでご注意ください(使用環境により前後)。
    効果低下後、市販のくもり止めを付けても効果は出ません。
  • 温度の低い場所から、常温以上の場所へ移動した後や、空気が滞留しやすい全体を覆うタイプの花粉症用等のフレームなどの使用環境では、くもりが生じる場合があります。
  • レンズ表面に指紋や油分などがつくと、くもりの原因になる場合があります。汚れがひどい時には水洗い後直ぐに拭きとってください。
  • 通常のレンズより吸水性が良く汚れが残りやすくなりますので、汚れは水洗い後すぐに拭き取ってください。
  • 水分が付着した直後は滑りにくく、特に拭きづらいため、水分を取り除き乾いた後に軽く拭きあげてください。
  • 汚れたハンカチやティッシュ、レンズクリーナーなどで拭くと曇り止め効果が弱くなることがあります。
  • お手入れの不備や極端な温度変化や湿度変化、その他の理由によりレンズの表面がくもることがあります。レンズが冷えすぎると、レンズ表面近くの水分が凍って曇りに似たような状態になったり、長時間、高湿度環境でご使用になると曇り止め効果が弱くなることがあります。
  • 通常のマルチコートに比べて、キズが入りやすいため、特に固い付着物がついた場合は、お手入れに注意が必要です。
  • 防曇レンズの構造上、従来のマルチコートに比べレンズの黄変化が少し早く始まります。

以上になりますが、今回の実験内容は皆様の実際のご使用状況・環境とイコールではないと思われますので、その効果性は前後すると思いますが、その点はどうかご了承ください。

このような体験談を通し、眼鏡作りに悩まれている方に少しでもお役に立てばと願っておりますので、ご質問やリクエストなどございましたらご連絡ください。どうかよろしくお願いします。

2014年 1月 初版
2024年 1月 更新

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