Vol.56 強い近視のお悩み(厚み、輪郭・眼が小さくなる)

東海光学お客様相談室の尾上です。
今回は、以前頂いたお問い合わせの中から強い近視でお悩みのお客様からのお問い合わせを基に、厚みや目の大きさなどメガネを通した「見た目、見られ方」に関する対処の方法をアドバイスさせて頂きます。

【お問い合わせ内容】

近視がひどくレンズがかなり厚くなり、目も小さくなり、輪郭の差もひどく、おもちゃの眼鏡のようになります。
度数は以下の通りです。

R:S-10.00
L:S-9.00

眼鏡のレンズを「ベルーナZX-MU」に交換しようと考えていますが、目の大きさの改善など見込みありますでしょうか?

同じようなお悩みを持たれている方も多くいらっしゃるかと思います。
今お掛けのメガネレンズの種類にもよりますが、結論から申し上げますと、若干は改善できますが、レンズ変更だけでは不十分と言えます。

少し小難しいお話になりますが、目が小さくなる仕組みから考えていきましょう。

まず、メガネレンズは「プリズムの集合体」です。プリズムとは図1のように三角の形をしており、尖った方を稜(リョウ)、底辺を基底(キテイ)と言います。
近視レンズ(-レンズ、凹レンズ)はレンズの中心が一番薄く、端に向かうにつれて厚くなっていきます。つまり、レンズの中心に稜が向かっていく形状(図2)になっています。

プリズムの特性として、これを通して物を見るとき「像は稜の方向に引っ張られる」というクセがあります。つまり、近視レンズで物を見たときは像の全体が中心に向かって引っ張られることで、「収縮」される=通常より小さい状態に見える事となります。
また、人から見られたとき、メガネレンズを通した目はいつもより小さく見える、という事になります。

わかりにくいかもしれませんので、「虫眼鏡」を想像してみてください。虫眼鏡は、中心が厚く端に向かって薄くなっていますよね。近視レンズとは全く逆の状態です。
という事は、先のクセを当てはめると虫眼鏡を通して見た像は外側に引っ張られることで、「拡大」される=通常より大きく見えるという事になるのです。

ここまではご理解頂けましたでしょうか。
上記を踏まえ、強度近視の方がメガネをかけた状態を見ていきましょう。

①は何もかけていない状態、②は右眼に現状のレンズ(今回は屈折率1.60のレンズと仮定します)を入れたもの、③は右眼に「ZX-MU」(屈折率1.76)を入れたものの写真です。
※比較の為、左眼にはレンズは入っていません。

①と②を比べて頂くと、ご覧の通り裸眼に比べかなり目が小さくなり、顔の輪郭も大きくくぼんでしまっています。
では、今回の問い合わせ内容であります「ZX-MU」に変更した場合(画像では②→③)はどうでしょうか…?
残念ながら、ほとんど変化は見られません。実際メガネ越しに眼の横幅を測ってみますと、②は18mm③は19mmでしたので、数値上は若干の効果はあったとも言えまがすが、見た目でわかるレベルではありませんでした。

こうした目や輪郭の収縮率(拡大率)に影響するものとしては、厚み、屈折率、表面カーブ、頂点間距離等、いくつかの要素があります。
今回のようにレンズを「屈折率が高く、薄くなるレンズ」に変更することで、厚みと屈折率に関しては理屈上良い影響が出ます。但し先の写真の通り、目に見える効果はよほどでなければ難しいものになります。

表面カーブに関しては、カーブが浅い方が収縮率(拡大率)を抑えられますが、こちらもさほど大きな効果は見られません。
※)表面カーブ:レンズ表面の湾曲具合を示します。
もう一つの頂点間距離に関しては、上記と比べ比較的影響度が大きい要素になります。
※)頂点間距離:簡単に言うと目からレンズまでの距離を指します。
以下の写真を見てください。①よりも②の方が小さく見えませんか?

①は一般的に平均と言われる12mmで、②はこれより10mm遠くにした写真です。
違いを分かりやすくするためにちょっと極端な例にしてみましたが、少しでもこの距離を近づけるという事も収縮率(拡大率)を抑える一つの手になります。但し、お顔の形状やまつ毛の長さなどとのバランスも考える必要があります。

ここまではメガネレンズとフィッティングの話でしたが、実は他人からの見た目の事を考えた場合、レンズよりも大事なことがあります。それは、「フレームの選定」です。
以下の写真をご覧ください。

①に比べ②の方が何となく収縮が抑えられているような感覚がありませんか?
これは一つの「錯視効果」と言えます。

【デルブーフ錯視】
同じ大きさの円でも、大きい円に囲まれると小さく見え(左)、小さい円に囲まれると大きく見える。

写真の撮り方が下手な部分はご容赦頂きたいですが、レンズ種類も度数も頂点間距離もすべて同じ条件でフレームだけを変えてみました。

・①のフレーム
玉幅:52mm 鼻幅:17mm 天地幅:37mm
・②のフレーム
玉幅:46mm 鼻幅:20mm 天地幅:24mm

②はかなり玉幅(レンズの横幅)と天地幅(レンズの縦幅)を抑えたものにしています。
錯視による眼の大きさもさることながら、お顔の大きさに合わせたフレームにすることで輪郭の窪みも目立ちにくくなっていることがお感じいただけると思います。
フレームの選定に関しては、レンズとは異なりお客様のお好みも大きくかかわってまいりますので、「何を優先するか」が悩みどころです。

長文になり恐縮ですが、最後に一つだけ。
ここまでお読みいただき、「だったら超薄型のグレードの高いレンズをわざわざ選ぶ必要はないんじゃないの?」を思われた方もいらっしゃるのではないでしょうか。

確かに収縮率(拡大率)を抑える効果は期待するより少ないかもしれません。ただ、屈折率の高いレンズの最大の効果は「薄くなること」にあります。
以下の写真は先の①のフレームに入れた同度数のレンズです。

向かって左側が屈折率1.60、右側が屈折率1.76のレンズです。
一番厚いところでは8.0mmと6.8mmとなり、1.2mmもの差が出ました。数字で見ると大きくは感じませんが、写真で見れば一目瞭然です。
冒頭に掲載した3枚の写真の、②と③の耳側を見てみてください。②の耳側が少し白くなって見えると思います。これが俗にいう「牛乳瓶の底」みたいになる現象です。
これと比べ、③の写真はかなりすっきりしていることがお分かり頂けると思います。

また、重さに関しても屈折率1.60が7.80g、屈折率1.76が7.04gという差が出ました。
こちらも数字上は微々たるものに見えますが、今まで厚く、重いメガネを掛けられていた方には大きな違いとなるはずです。

強度の近視のお客様は、本当にたくさんのお悩みをお持ちの事と思います。
我々レンズメーカーとしましてもメガネレンズがその一助となれば喜ばしいことですが、レンズだけでは解消できないことも多々あります。
フレーム選定やフィッティングも含め「メガネ」として考え、最善の方法を検討するためにもぜひ眼鏡店様とよくご相談されることをお勧めいたします。
また、情報の取捨が難しいところもありますが、ネット上にも同じ悩みを持たれていらっしゃる方がフレームの選定方法やメイク術などを発信されています。
是非参考にしてみてください。

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2018年 5月 初版